異端の漢字学者『白川静』、酒見賢一『陋巷に在り』との関係
◇ 武田鉄矢 - 今朝の三枚おろし 孔子、論語、白川静
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◇ 孔子、論語、漢字、白川静、巫女
異端の漢字学者『白川静』の
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- 作者: 白川静
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『呪の思想』は梅原猛との対談本だが、この本の中で『白川さんの孔子の話をいつか小説家が書きますよ』などいうことを梅原猛がいうのだけけれど、それ読んでいたと思われる、作家の酒見賢一の書いた小説が
- 作者: 酒見賢一
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この本、読んでたらわかるけど、これ、完全に白川静の『孔子伝』をベースに書かれています。たぶん、中国文学小説好き(そんな人は少ないと思うが)には公然の秘密?だと思います。
白川静によれば、孔子は巫女(ふじょ)の私生児で、巫祝的な世界の伝統の中で育ったのではないか?と言われています。そもそも、儒教の『儒』という漢字は、雨乞いを生業としてた巫覡(ふげき、『巫』は女性の巫女、『覡』は男性の巫男のこと)のことを指し、葬祭などを仕事としてやっていた部族のことを表しているようです。
孔子の『礼』の中に葬儀の決まりとかが、かなりのボリュームを持ってることもそれを裏付けています。
白川漢字学においても、漢字の起源が甲骨文字(亀の甲羅や鹿の骨に書かれた象形文字、卜占という占いにも使われた)、金文(青銅器に刻まれた神への文字、呪語)であり、王家に仕えていた聖職者、神官(王自身がそうである場合も多く、『周公旦』
- 作者: 酒見賢一
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巫覡の起源が王に仕える神官であるとするなら、孔子の『礼』の本質は、王家の祭礼や葬儀の決まりなど、天や神と交信する異能のシャーマンの力も含むものだったと思われます。
巫覡の中にも階層が存在し、落ちぶれたり、身分が低い者は、街の庶民の葬儀に関わったり、古代の王の墓を盗掘するなどの悪さをした集団もあったようです。
以下、ちょっと、『陋巷に在り』のネタバレ注意ですが。
酒見賢一『陋巷に在り』では、その才能に長けた、孔子の一番弟子『顔回(淵)』が活躍しますが、媚術に優れた異能の南方の巫女との対決、南方の古代神『饕餮(とうてつ)』(体は牛か羊で、曲がった角、虎の牙、人の爪、人の顔などを持つ)との対決シーンまで出てきます。
『陋巷に在り』の中では、孔子はそのような出自を持ち、各地に住み分けている、巫覡集団同士の暗闘なども描かれて、『陽虎の乱』などの中国の歴史的事件の背後に、そういう集団がいたのでは?という設定でスートリーが展開していきます。
孔子は古い巫覡集団の伝統に縛られず、時代の変化の中で敢えて『怪力乱神を語らず』と宣言しますが、『周公旦』のような聖王=君子を理想として掲げています。
孔子自身も、夢の中で『周公旦』に会って教えを乞うというエピソードももっていって、これって、夢見の技法というか、シャーマンの能力ジャン!と突っ込みを入れたくなります。
つまり、巫覡とか、占いとか、シャーマンの能力とかを言ってしまうと、胡散臭いものと思われる可能性もあるので、敢えて、それは隠して、『礼』というものの近代化を図ったのが孔子だったのかもしれません。
そして、儒教、儒家はその本質を捨てて、王家の祭礼を担当する形式主義者のようになっていきます。ただの伝統の守護者のように。
同じことは日本でも起こっていて、卑弥呼の邪馬台国から大和政権への移行は、シャーマンの世界からの脱却と言えるかもしれません。
ただ、結局、陰陽師とか出てきてしまうので、そんなに変わらないとも言えます。
ただ、この卑弥呼の邪馬台国と、漢字の起源である甲骨文字を産んだ『殷王朝』(商)は、シャーマン的なところ、文身(入れ墨)、顔に朱色の顔料を塗る習俗という共通点があります。
殷周革命というもので、殷は滅んでしまいますが、滅んだ殷の民が各地を放浪して商売で生計を立てたことで、殷人=商人(元々、殷は商とも呼ばれていた)とも呼ばれるようになります。
近江商人も、九州の隼人(隼人呪術)、卑弥呼とかも、起源は殷の人ではないかと、僕は思っています。少なくとも、中国南方からやってきた海洋民族が多数いたと言えます。
話が別テーマになってしまうので、このあたりで終わりますが、殷周などの古代中国の文明を研究することで、日本の古代史が分かってくるという白川静さんの着眼点は素晴らしく、僕も全く同じ結論に達してます。
その辺りの話は、また次回に。
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